KAISETSU

三浦直之 自作解説③

「すれちがう、渡り廊下の距離って」自作解説

「校舎、ナイトクルージング」で60分の使い方を掴んだはずが、この作品は60分ってどうやるんだっけととても悩んだ。演劇ってむずかしい。その結果ページ数はいつ高最長。新校舎と旧校舎に物語の中心はあるのだけど、そこは描かずにその狭間を描くみたいなことがやりたかった。ダイアローグで物語るんじゃなくて、ダイアローグそのものが物語になる、みたいな。

いつ高シリーズは、毎回そのとき自分がハマっているものをモチーフにすることが多くて、この作品ではラップ。当時、フリースタイルダンジョンをやたらとみてた気がする。僕が言うまでもないけどフリースタイルバトルって本当にすごい。韻を踏んで言葉が転生して、そこから思いもよらないコミュニケーションが生まれる。そういう思いがけなさってときにとても危ないけれど、でも、たまに奇跡みたいな対話が生まれたりもする。そういう思いもよらないすれ違いをこの作品で自分も描いてみたかった。明後日の方向にむかって言葉を投げて、それをダイビングキャッチするような対話。
(逆)おとめが耳をすます存在だとしたら、白子はみつめる存在。右往左往する人々をみつめつづける白子のまなざしが愛おしい。点滅を演じる大村わたるくんの「好き」よりも「憧れ」が勝ってるヒップホップにわかファンっぷりも最高。ヒップホップ素人の自分が書いたラップを演出するときめちゃくちゃ恥ずかしかった。

初演はSTスポットという50席程度のコンパクトな空間で上演したけど、高校の演劇鑑賞会によばれたときは1000席近いキャパシティの劇場で上演した。そのときは作品が空間にマッチするのかとても不安だったけど、空間が広がり舞台の端と端が伸びたことで渡り廊下のすれ違う姿がより際立ってくれた。広い空間に映える作品だとおもってる。

ひもQの生産中止がとても悲しい。小さい頃、ひもQを指にぐるぐる巻き付けてから一口で食べるのが好きだった。復活を願う。