KAISETSU

三浦直之 自作解説⑧

「心置きなく屋上で」自作解説

当初「いつ高シリーズ」はコンパクトな劇場で細かい目線や仕草にこだわりながら作ろうと考えていたけれど、ロロの奥山くんから広い空間でもつくるべきだと説得されて「心置きなく屋上で」はKAATで上演をした。天井までの高さを活かしたいのと、コロナで疲れていたというのもあって、開放感のある屋上が舞台になった。
執筆前は、いつ高は小さい場所でやるから楽しいのになあと、愚痴ったりしたけれど、結果的にKAATで上演できてとても感謝している。広さのあるいつ高も楽しいですね!それに高校演劇の全国大会もめちゃめちゃでかい劇場でやってるもんね!奥山くんごめんなさい。

執筆中、QuizKnockのYouTubeチャンネルにドハマリした。とくに1文字クイズや0文字クイズは何回もみかえしてしまう。解答者はたった一つの文字や句読点の配置から問題文を推測して答えを導き出す。問題文のなかにはクイズ制作者の解いてほしいという願いが宿っていて、解答者はその願いを全力で受け止める。解かれるための言葉と、解く言葉。それってめちゃくちゃロマンチックなラブストーリーじゃないか!というわけで、「心置きなく屋上で」はラブストーリーになった。こたえてもらいたくて書かれたラブレターはクイズみたいだ。

太郎が手紙を読むシーンにとても苦戦した。誰かの言葉が私の言葉になる瞬間を作りたいのだけど、それは思い込むとか信じ込むっていうのとは微妙に違う。誰かの言葉は私の言葉ではない、ということを踏まえた上で、それでも信じようとするとき、かすかにあなたと私の言葉は一緒に響く。太郎を演じる大悟は、嘘と本当を等しく存在させてくれた。

僕は、ここ数年ラブストーリーというものがわからなくってきているのだけど、出来上がったこの作品をみて、またラブストーリーを書いてみたいとおもった。愛してるって書いてみたい。