KAISETSU

三浦直之 自作解説⑥

「グッド・モーニング」自作解説


「校舎、ナイトクルージング」に登場した(逆)おとめが聴くキャラクターだとしたら、「いつだって窓際であたしたち」の白子はみつめる存在。そんな2人が早朝の駐輪場で出会ったらどんな会話をするだろう。Vol.1で太郎を遠くから見つめ続けるだけだった白子は、vol.3で太郎と出会って、いっしょにひもQを握りあった。遠くの声に耳をすまし続ける(逆)おとめが学校へいくかどうか悩んでいるとしたら、白子はなんて声をかけるだろう。そんなことを想像しながら「グッド・モーニング」を書いていった。

序盤の2人はだるまさんがころんだシステムというか、白子が(逆)おとめをみつめるたびに(逆)おとめは目線をそらして、いっこうに視線は混じり合わない。稽古中も、大場さんの気配を察してまなざしを回避していく望月さんが能力者みたいでかっこよかった。すれ違い続ける2人の視線がようやく交差した瞬間のそれぞれの表情をみてほしい。


2人芝居ということもあって、この作品は「いつ高シリーズ」全作品のなかで最も上演回数が多い。60席規模の劇場から1000席規模の劇場、さらには野外劇まで、本当にいろんな空間で上演する機会をもらってきた。特に思い出深いのは、野外で実際の駐輪場をつかった公演。劇場は壁で囲まれている。隔てられた壁の向こう側をどう描くかが演劇をつくるときのたのしさの一つだけど、野外劇にはそれがなくて、視線も声も、どこまでも伸びていく。野外劇は壁の向こう側じゃなくて、地平線の向こう側を目指していくような開放感が気持ちいい。「いつ高シリーズ」をつくるとき、いつも固有名詞の扱い方が内輪の空気をつくってしまってないか不安になるのだけど、このときは、老若男女さまざまなひとたちの笑い声がきこえてきて、それもとても嬉しかった。(逆)おとめとシューマイと白子の物語はまだ「いつ高シリーズ」で描ききれていないので、「いつ高シリーズ」という冠を外して、近いうちに書こうとおもっている。