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三浦直之 自作解説⑤

「いつだって窓際でぼくたち」自作解説

いつ高シリーズをはじめるときにスクールカーストは描かないと決めた。だから「いつだって窓際でぼくたち」も、カーストの違う男子生徒がたまたま放課後の教室にいあわせ、花火大会を通して親交を深めていく、みたいな話にはしたくなかった。描かれていないだけでいつ高にだってスクールカーストみたいなものはきっと存在しているのだろうけど、だからこそ、物語のなかではそうじゃないものを描きたかった。

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声をかけてもらえた瞬間をやたらとおぼえている。小学三年生の転校初日、友達のいなかった僕に「友達になろうよ」って声をかけてくれたHくん。暗黒の高校一年生を終えて、自分の高校3年間はこんな感じで過ぎていくんだろうなあと絶望していた二年生のはじめに「なに読んでるの?」って話しかけてきたM。大学の空気に馴染めずにいた僕に「向井秀徳好きなの?」って話しかけてくれた亀島くん。大学のみんなでカラオケにいったときに「なおちゃん話そうよ」って言ってくれた大悟。話しかけてもらうたびに「なんていい人なんだ!」ってめちゃくちゃ感動して、そんな僕の「いい人!」たちの記憶をぎゅっと凝縮して将門は生まれた。こんなやついないよっていうくらいのいいやつを描きたかった。どんなにいいやつにしても亀島くんが演じる将門は、いるかもしれないっておもえた。


しゅんやさんにはこれまで、母親役とか、ロボット役とか、少年役とか、封印されている神的ななにかとか、いろんなキャラクターを演じてもらってきた。今回しゅんやさんが演じる群青くんはイケメンにしたくて、たしか本人にもイケメンにしたいですって話した気がする。そして、見返したら、やたらとポケットに手を突っ込んでるところがとくにイケメンですね。

シューマイとモツのコンビの2人だけにとっての楽しい時間も好き。誰にも知られなくていい、他のひとが面白いとおもわなくたっていい、2人にとってだけ大切な時間。モツの「面白そうじゃないよ、ないじゃん。俺と新名くんにとって面白かったんだ」ってセリフがお気に入り。

シューマイ演じる新名さんは七転八倒する姿とにかくキュートで、いろんな災難にあわせたくなってしまう。

男子校ノリみたいなものに回収されない賑やかさをどう作っていくかとても悩んだ。この作品はまだ再演できていないので、もしまた上演できる機会があれば、そのことをもう一度考えてみたい。