KAISETSU

三浦直之 自作解説②

「校舎、ナイトクルージング」自作解説

高校を舞台にするなら夜の校舎に忍び込む話は絶対にやりたかった。夜の学校ってワクワクするする。秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』や相米慎二『台風クラブ』の冒頭のプールシーンは物語がはじまる予感に満ちているし、阿部共実『月曜日の友達』の夜の校庭のひとときは永遠に続いてくれっておもう。青春ものの名作はどれも魅力的な秘密が描かれるけど、夜の学校には秘密がとても似合う。

この作品で60分の使い方をつかんだ気がした。尊敬する演出家の中野成樹さんが「フルサイズと違って60分って一つ魅力的なパンチラインがあればそれでいけるんだよね」と仰っていて、本当にそうだなとおもう。今作でいうと「夜の学校で昼間を想像する女子高生」というイメージで突っ走った。
60分という限られた時間だと、どうしてもあれもこれもと詰め込みたくなるけど、できるだけなんでもない時間を描きたくて、映画『GO』の長台詞引用シーンをいれたりした。楽を演じる大石将弘さんの窪塚洋介演技が最高でいまだに定期的に見返したくなる。
現役高校生が『校舎、ナイトクルージング』を上演したのを見に行かせてもらう機会があって、そこでは『GO』を『るろうに剣心』へと書き換えていてすごく嬉しかった。もしこの先、上演してくれる高校生がいたら自分たちの好きなものに書き換えてほしい。

僕は、中高時代ずっとラジオを聞いて育った。まだradikoはなかったので、ラジカセの周波数を必死にあわせてノイズ混じりの声に耳をすませた。(逆)おとめはいつ高シリーズのなかでも人気キャラで僕も大好きなのだけど、常に360度の気配を感じ取って繊細に周波数をあわせようとする望月さんの演技がこのキャラクターを生き生きさせてくれている。あと、(逆)おとめが話している言葉を丁寧に受け止めていく将門の姿もとても好き。この作品は、とくに俳優それぞれの聞き姿が素晴らしいので、話す人だけじゃなく聞いてる人たちも堪能してほしい。

初演では夜の静けさをつくるために照明暗め声小さめでやったけど、再演重ねるうちにあんまり気にしなくなっていった。